このサイトの他の記事は、すべて「台風が来る前」の話です。 この記事だけは、過ぎたあとの話をします。

雨戸が飛んだ、カーポートが潰れた、車に木が倒れた。 そういうとき、多くの人はまず片づけを始めます。それが、いちばんもったいない動き方です。

片づける前に、写真を撮る

宜野湾市は、被害を受けた場合の協力事項としてこう書いています。

被害を受けた場合、片付けや修理をする前に被害状況を写真に撮り、保存していただくよう ご協力よろしくお願いします。

理由は単純で、支援の入口になる証明書が「被害の程度」を確かめるものだからです。 片づけたあとでは、程度を確かめられません。宜野湾市も、時間が経つと 被害状況を適切に把握できない可能性があると注意しています。

撮り方の目安も公式に示されています。宜野湾市が写真判定を希望する人に求めているのは、 「全景写真(周囲4面)」「被害を受けた部分について、その内容が明らかになるような写真」です。 建物の外側を4方向から撮り、そのうえで壊れた箇所を撮る ── これを覚えておいてください。

停電でスマホの電池が心もとないときは、安否連絡の記事のとおり 電池を安否確認に残す必要がありますが、写真だけは先に撮っておく価値があります。

り災証明書と被災届出証明書は、別のもの

名前が似ていて紛らわしいのですが、対象がはっきり分かれています。 宜野湾市の説明が最も明快なので、そのまま整理します。

り災証明書(罹災証明書)被災届出証明書
対象住家(現に住んでいる建物)非住家(事業所・空き家・店舗・倉庫)、カーポート、車両、家財など
何を証明するか被害の程度を証明する届け出があった旨を証明する(程度は証明しない)
調査住家被害認定調査を実施する住家被害認定調査は実施しない(写真で判断)
主な使いみち公的な被災者支援制度主に民間の損害保険の請求

つまり、カーポートや車がやられた場合は「り災証明書」ではありません。 台風で多いのはまさにこの被害なので、ここを間違えると窓口で往復することになります。

なお、宜野湾市の場合、交付までは2週間から1か月程度かかり、手数料は無料です。 即日は出ません。急ぐ用事があるなら、その前提で動いてください。

期限がある

見落とされがちですが、申請には期限があります。宜野湾市は、

原則として、災害発生後90日以内に申請してください。

としています。また、交付された被害の程度に納得できない場合の再調査は、 交付を受けた日の翌日から起算して60日以内です。

期限は市町村や災害によって変わりうるので、数字を覚えるより「期限がある」ことを覚えて、 早めに窓口へというのが実際に役立つ知識です。

沖縄の落とし穴 ── 担当課が市町村ごとに違う

ここがこの記事のいちばん伝えたいところです。

「役所の防災の窓口に行けばいい」と思っていると、空振りします。

沖縄県が令和5年台風第6号のときにまとめた発行窓口一覧を見ると、担当課はこれだけ割れています。

市町村り災証明書の担当課
那覇市防災危機管理課
宜野湾市防災危機管理室
浦添市資産税課
名護市総務課
糸満市秘書防災課
沖縄市市民生活課
豊見城市税務課
うるま市危機管理課
今帰仁村福祉・こども課
本部町資産税班
北谷町基地・安全対策課
西原町福祉課

防災系の課とは限らず、税務・資産税・市民生活・福祉と、市町村ごとにバラバラです。 住家の被害認定は固定資産の評価と近い仕事なので資産税課が持つ、という理屈は成り立ちますが、 住民の側からは予測できません

しかも、同じ市の中でも、何が壊れたかで窓口が変わります。 沖縄市の案内では、

  • 住家の被害 → 市民生活課
  • 農地・農業施設・農業機械の被害(市内在住の農漁業者) → 農林水産課
  • 火災による被害 → 消防本部 予防課

と、3つの窓口に分かれています。火災が消防の担当になるのは宜野湾市も同じです。

平時にやっておくべきことは、ひとつだけです。 お住まいの市町村のサイトで「り災証明書」を検索し、担当課の名前と電話番号を確認しておく。 それだけで、被災直後にたらい回しされる時間を減らせます。 停電情報の登録と同じ、5分で終わる準備です。

なお、上に挙げた一覧は令和5年台風第6号のときのもので、県内全41市町村ではなく 34市町村が対象です(後述の災害救助法が適用された市町村)。 組織改編で担当課が変わることもあります。最新は必ずお住まいの市町村にご確認ください。

り災証明書が、支援の入口になる

なぜ証明書の話から始めたかというと、その先の支援がここを起点に動くからです。 沖縄市が公開している一覧を見ると、それがはっきりわかります。

  • 災害見舞金 … 「罹災証明書の交付を受けた方が対象」
  • 就学援助費(学用品費・給食費など) … 「通常の申請書類のほか、り災証明書等が必要です」
  • 生活福祉資金貸付(市社協) … 「必要書類:り災証明書・被害に遭ったことがわかる写真」

このほか沖縄市には、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料の減免、 保育料の減免・徴収猶予、固定資産税の減免、市税の徴収猶予、水道料金・下水道使用料の減免、 一般廃棄物処理手数料の減免、市営住宅の空き部屋の一時提供(3か月以内)などが用意されています。

制度の名前を覚える必要はありません。 覚えておくのは次の2つで足ります。

  1. り災証明書(または被災届出証明書)を取る
  2. 役所で「被災したのですが、使える制度はありますか」と聞く

金額・条件・期限は、災害の規模や年度によって変わります。 このサイトでは金額を書きません。必ず、お住まいの市町村の窓口で確認してください。

なお沖縄市は、固定資産税の減免について 申請日と納期限の関係で減免額が変わる場合があるため早めに問い合わせるよう案内しています。 早く動くほど有利になりうるという点でも、片づける前の写真と、早めの申請が効いてきます。

沖縄では、停電だけで災害救助法が適用されたことがある

「災害救助法」は、家が壊れるような大きな災害のための法律だと思われがちです。 ところが沖縄では、停電を理由に適用された実例があります。

沖縄県は令和5年台風第6号について、

令和5年台風第6号の影響による停電に伴い、多数の者が生命又は身体に危害を受け、 又は受けるおそれが生じていることから、沖縄県は、県内10市9町15村において 災害救助法の適用を決定しました。

と公表しています。適用は令和5年8月1日、根拠は災害救助法施行令第1条第1項第4号です。 このとき県は、8月4日までに総戸数の最大34%にあたる約21万戸が停電(総戸数約63万戸)と 記録しています。

停電の記事で「数日続いても困らない状態を作る」と書きましたが、 沖縄の台風の停電は、制度が動く規模になりうるということです。 災害救助法が適用されると、避難所や応急仮設住宅の設置、食品・飲料水の給与、被服・寝具等の給与、 住宅の応急修理、障害物の除去といった救助が対象になり、費用は国と県が負担します。

適用されるかどうかは災害ごとの判断です。自分で判断せず、まず市町村に相談してください。

災害ボランティアは、必ず来るわけではない

家の片づけや災害ごみの搬出を手伝う災害ボランティアセンターは、 社会福祉法人である沖縄県社会福祉協議会(県社協)や市町村社協などが、 必要と判断したときに設置します。行政機関ではありません。

そして重要なのは、台風のたびに必ず設置されるわけではないことです。 県社協は、令和8年7月10日の台風第9号への対応について、

先島地域では倒木や停電、一部施設設備の損傷等の被害が確認されたものの、 当初懸念された大規模な人的被害や家屋被害、浸水被害は確認されませんでした。 また、被害の状況や復旧状況を踏まえ、災害ボランティアセンターの設置は 見送ることといたしました。

と公表しています。このときは救援本部を設置して先遣隊を派遣したうえで、 設置を見送るという判断がされました。

つまり、「ボランティアが来るのを待つ」という前提で計画を立てるのは危険です。 自分と家族で片づけられる範囲を想定しておき、 設置されたら助かる、くらいに考えておくのが安全側です。 設置されるかどうかは、そのつど県社協や市町村社協の公式発表で確認してください。

まとめ ── 被災直後の3ステップ

  1. 片づける前に写真を撮る。 建物の全景を4面、そのうえで壊れた箇所
  2. 市町村の窓口で証明書を申請する。 住家なら「り災証明書」、車やカーポート・家財なら「被災届出証明書」。期限がある
  3. 窓口で「使える制度はありますか」と聞く。 減免や見舞金は証明書を起点に動く

そして平時のうちに、お住まいの市町村の担当課名だけ調べておいてください。

この記事で扱っていないこと

現在進行中の災害について、災害救助法が適用されているか、 災害ボランティアセンターが設置されているか、支援制度の受付が始まっているかは、 このサイトでは扱いません。必ず公式の最新情報と、 お住まいの市町村の発表で確認してください。

支援金・見舞金・応急修理などの金額や申請期限は、この記事では扱いません。 災害ごと・年度ごとに変わり、個人サイトで最新を保証できないためです。 必ず市町村の窓口でご確認ください。

制度の適用可否や被害認定の判断には踏み込みません。 判断に迷う場合は、お住まいの市町村の担当課にご相談ください。