停電の記事で書いたとおり、沖縄の台風で最も高い確率で起きるのは停電です。 そして停電が続くとき、スマホの電池は照明でも情報収集でもなく、まず安否連絡に必要になります。
このとき効いてくるのが、連絡の取り方の設計です。 心配した親戚や友人から個別に連絡が入り、そのたびに「大丈夫です」と返していると、 電池も通信も消耗します。相手が10人いれば10回です。
原則はひとつだけです。一度で、全員に、同じ内容を伝える。
公式サービスは、すでに「状態を選ぶ」形になっている
意外に知られていませんが、公式の安否確認サービスは 文章を書くのではなく、決まった選択肢から状態を選ぶ設計になっています。
NTTドコモの災害用伝言板では、次の状態から選びます(複数選択できます)。
「無事です。」「被害があります。」「自宅に居ます。」「避難所に居ます。」
そのうえで全角100文字以内(半角200文字以内)のコメントを添えられます。 登録した情報は、ドコモ以外の携帯電話やパソコンからも確認できます。 災害用伝言板は携帯4社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル)がそれぞれ運用しています。
これが「一度で、全員に」の公式版です。 一人ひとりに返信する代わりに、 状態をひとつ置いておけば、心配している側がそれぞれ見に来られます。
電話よりつながりやすい理由
総務省は、災害用伝言板について、混み合いやすい電話(音声通信)ではなく インターネット等(データ通信)で伝言の登録・確認を行うため、 電話が混み合っていてもつながりやすいと説明しています。
音声で残す災害用伝言ダイヤル(171)もあり、 こちらは1伝言につき30秒以内で録音します。 録音できる件数や保存期間は運用によって変わるため、使うときに公式の案内で確認してください。 171の使い方の手順は、離島の記事に詳しく書いています。
ただし、台風で開設されるとは限らない
ここが、沖縄で暮らすうえで最も注意すべき点です。
これらのサービスは、常に使えるわけではありません。 災害が起きたときに開設されるもので、その条件は地震を軸に書かれています。
| サービス | 開設・表示の条件(公式の表現) |
|---|---|
| ドコモ 災害用伝言板 | 「震度6弱以上の地震など大きな災害が発生した場合のみ開設します」 |
| 災害用伝言ダイヤル(171) | 「震度6弱以上の地震発生時、及び地震・噴火等の発生により、被災地へ向かう安否確認のための通話等が増加し、被災地へ向けての通話がつながりにくい状況(ふくそう)になった場合」(消防庁) |
| 災害用伝言板(web171) | 災害発生時のみの提供 |
| LINE安否確認 | 「震度6以上などの大規模な災害が発生したときに」表示される |
台風の停電で、これらが使える状態になっているとは限りません。 171についてNTT東日本は、提供開始は 「状況に応じてNTT東日本が判断し、各テレビ・ラジオ・NTT東日本ウェブサイト等を通じて一般にお知らせします」 としています。つまり、開いているかどうかは告知を見ないとわかりません。
家族で「いざとなったら171」と決めていても、 台風の日にはそもそも開設されていない可能性がある — ここを知らずに一本足で備えるのは危険です。
台風接近時に開設されているかどうかは、テレビ・ラジオや各社の公式サイトで確認してください。 開設されていれば、それが最も確実な手段です。
だから、台風の連絡は「家族のルール」で回す
公式サービスが開くかどうかに関係なく機能するのは、平時に決めておいたルールだけです。
事前に決めておくこと
- 連絡は1日1回、時間を決める(例:朝8時と夜8時)。 「何かあったら連絡する」だと、鳴らない電話を互いに待ち続けることになります
- 連絡役を1人決める。県外の親戚には、その1人がまとめて伝え、他の人はその人に聞く。 被災している側が何度も説明しなくて済みます
- 返信がなくても、すぐ異常とみなさないと決めておく。 停電中は電池を切っているだけ、ということが普通に起こります
- 落ち合う場所を決めておく。連絡がつかない前提の保険です
このうち連絡役を1人決めるのが、電池の節約には最も効きます。
プロフィールで「一度に」伝えるという工夫
SNSを使っている家族どうしなら、アカウント名やプロフィール欄を「無事です」に書き換えて、 状態そのものを掲げてしまうという方法が知られています。 見た人は問い合わせる必要がなくなるので、やり取りの回数を減らせます。
ただし、これは公式に案内されている方法ではありません。 総務省・消防庁・携帯各社の公式情報に、この方法を推奨する記述は見当たりませんでした。 利用者のあいだで共有されている工夫、という位置づけで理解してください。
使うなら、次の点に注意してください。
- 誰のアカウントかわからなくなると逆効果です。名前を丸ごと置き換えるのではなく、 元の名前を残したまま追記するほうが安全です
- 公開アカウントでは、居場所がわかる情報を書かない。 「無事です」だけで十分です。住所や外出中であることは書かないでください
- 書き換えたことに気づかれなければ意味がありません。 家族には「安否はプロフィールを見て」と平時に伝えておいてください
- 更新を忘れないこと。 状況が変わったのに「無事です」が残り続けるのは、 何も書かないより危険です
なお、LINEには公式の安否確認機能があり、まさにこの発想を製品化したものです。 「無事」または「被害あり」を選んで公開すると、 プロフィールアイコンに安否ステータスバッジが付き、プロフィールページに安否ステータスとメッセージが表示されます。 災害が落ち着いたタイミングで表示されなくなります。 これも表示条件は震度6以上などの大規模災害なので、台風では現れませんが、 地震・津波のときは自作の工夫より確実です。
電池を安否連絡のために残す
連絡手段を決めたら、次は電池です。 モバイルバッテリーやポータブル電源の備えは停電の記事にまとめています。 ここでは、停電が始まってからの使い方だけ補足します。
- 通信を使わない時間を作る。連絡の時間を決めておけば、それ以外は機内モードにできます
- 画面を暗くする。画面は電池を大きく使います
- 動画・地図・SNSの流し見を控える。情報収集は 公式の一次情報を短時間で見るほうが電池を使いません
キャリアが用意していた節電機能もあります。ドコモの非常用節電機能は 「災害などの非常時に、スマートフォンで動作する機能を必要最小限とし、少しでも待受時間を延ばすモード」で、 災害時に役立つアプリは使えるようにしたまま、動作するアプリや画面消灯中のパケット通信を制限します。
ただしドコモは、「2020-2021冬春モデル以降発売の端末については、一部の機種を除いて本機能が搭載されておりません」 としています。最近の端末では使えないと考えたほうが確実です。 その場合は、お使いの端末に標準で用意されている省電力の設定を使ってください。
平時にやっておくこと
災害用伝言板と171は、体験利用ができます。 総務省とドコモの案内によると、毎月1日・15日などに試せます (正月三が日、防災週間 8月30日〜9月5日、防災とボランティア週間 1月15日〜1月21日など)。
一度も使ったことのない手段は、本番でも使えません。 台風シーズン前の点検として、停電情報の登録と一緒に、 家族で一度試しておくことをおすすめします。
この記事で扱っていないこと
安否確認サービスが現在開設されているかどうかは、このサイトでは扱いません。 開設状況は、テレビ・ラジオや各社の公式情報で確認してください。
各サービスの仕様(選択肢の文言、文字数、保存期間、対応端末)は変更されることがあります。 利用時は必ず提供事業者の公式ページをご確認ください。