「避難所に逃げる」と言うとき、多くの人は2つの違うものを混同しています。 法律上、「避難場所」と「避難所」は別物です。そして、この違いを知らないまま逃げると、 命を守れない場所へ向かってしまうことがあります。
なぜ分けられたのか ── 東日本大震災の教訓
内閣府の防災白書は、この区別が生まれた経緯をこう説明しています。
東日本大震災では「避難場所」と「避難所」が明確に区別されず、災害ごとの指定もなかったため 被害が拡大した。この教訓を受けて、平成25年6月に災害対策基本法が改正され、 「指定緊急避難場所」と「指定避難所」が別の制度として定められました。
つまりこの区別は、行政の言葉遊びではなく、実際に人が亡くなった反省から生まれたものです。
2つの違い
指定緊急避難場所 ── 命を守るために、いま逃げる先
内閣府の定義:
津波、洪水等による危険が切迫した状況において、住民等が緊急に避難する際の避難先であり、 住民等の生命の安全の確保を目的とするもの
那覇市は「地震や津波等のあらゆる災害時においても一定の安全を確保できる避難場所」、 豊見城市は「迫ってくる災害の危険から命を守るために、まず避難する場所」と説明しています。
重要なのは、災害の種類ごとに指定されていることです。 市町村長が、災害種別(津波・洪水・土砂災害・地震・火災など)に適した場所を指定します。
つまり「洪水では安全だが、津波では危険」という場所が存在します。 ハザードマップで、災害種別ごとの可否を必ず確認してください。 「近所の避難場所」と一括りに覚えていると、津波のときに危ない場所へ向かうことになりかねません。
指定避難所 ── 危険が去ったあと、しばらく過ごす場所
内閣府の定義:
災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、 または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設
豊見城市は「災害により、住居を失った市民等が一定期間の避難生活を行う場所」とし、 施設の安全確認後に市が開設するとしています。
ここが肝心です。指定避難所は、揺れた直後に走り込む場所ではありません。 安全確認を経て開設されるものであり、津波から逃げる先として設計されていません。
福祉避難所
豊見城市は「指定避難所での避難生活が困難な方が設備等の整っている施設で避難生活を行う場所」 としています。安全性と受入れ可能性の確認後に市が開設します。 配慮が必要な家族がいる場合は、平時にお住まいの市町村へ相談しておくことをお勧めします。
津波避難ビル ── 最後の手段であって、第一選択ではない
沖縄の沿岸部では「津波避難ビル」が指定されています。ここが最も誤解されやすい点です。
沖縄市は、津波避難ビルをこう定義しています。
「津波警報」や「大津波警報」が発表され、避難指示が発令された場合などに、 高台への避難が困難となり、やむを得ず緊急的に一時避難するための建物
豊見城市も「津波が来るまでに高台へ避難するのが難しい地域の中で、避難することができる 高い丈夫な建物」としています。那覇市では「津波緊急一時避難施設」と呼ばれ、 市が協定を締結している民間施設等とされています。
沖縄市が挙げている注意点は、そのまま覚えておく価値があります。
- 高台への迅速な避難が大原則であり、津波避難ビルは必須ではない
- 「津波注意報」では利用しない
- 普段からいくつかの避難ビルを把握しておく
- 一時的な避難場所のため、危険が去ったら指定避難所に移動する
「高台へ逃げるのが原則。津波避難ビルは、それが間に合わないときの手段」 という順序を、逆にしないでください。
また、指定されているのは主に民間施設です(沖縄市)。 だからこそ、沖縄市は平常時から家族や自主防災組織で避難場所を確認しておくことが重要としています。 夜間や休日に開いているとは限らないことも、頭に入れておいてください。
今日やっておくこと
前の記事で自宅の海抜と浸水想定を調べたら、次はここです。
- お住まいの市町村のハザードマップで、災害種別ごとの指定緊急避難場所を確認する (津波で使える場所はどこか、を特に)
- そこまでの徒歩ルートを、実際に歩いてみる (夜間、雨、渋滞を想定する。離島の記事でも触れたとおり、 車で全員が逃げようとすると道路は動きません)
- 職場・子どもの学校・よく行く海沿いの場所についても、同じことを確認する
- 津波避難ビルを複数把握しておく(1つだけだと、閉まっていたときに詰みます)
- 家族で共有する。 別々の場所にいるときに被災することを前提に、 落ち合う場所を決めておく
避難場所の情報は、お住まいの市町村の防災ページで公開されています。 緊急時リンク集の避難情報の項からも辿れます。
この記事で扱っていないこと
避難指示の発令状況、避難所の開設状況は、このサイトでは扱いません。 必ず公式の最新情報で確認してください。 実際に避難するかどうかの判断は、気象庁の警報と、お住まいの市町村が出す避難情報に従ってください。 迷ったときは、安全側に行動してください。